「消したら……みんなは、どうなるの?」
あたしの心臓がドキドキと動く。
さっきとは別のドキドキだ。
「そりゃー、ね? まあ、うん……消える」
まるで他人事のように言う満先輩に、あたしの胸はズキリと傷んだ。
「……あたし、そんなことできないよ」
「……そう。なら別にしなくてもいいよ。俺は方法を教えただけ」
満先輩はベッドから降りる。
「恋ちゃんがいつも持ってんのって、王子から借りたスマホだよね?
……それ、ネット繋がってないでしょ」
「……うん」
白馬から貰ったスマホで、使える機能は電話とメールだけ。
「生徒会室に、1台だけ現実のネットに繋がってるパソコンがあるんよ」
「……どうして、そんなものが……?
……じゃなくて! 他に方法は、ないの……?」
あたしだって、この世界を黒歴史だと言ったけど、消したいわけじゃない。
嫌なことも沢山あるけれど、別にみんなのこと嫌いじゃないもん。
「んー、ちょっと待って……」
満先輩はカバンをまさぐり始める。
そして、誰かの手作りらしき絵本を取り出した。
「ほい、これ。うちの部員の作品」
あたしは満先輩から本を受け取る。
表紙には赤いクレヨンで
『1台のパソコン さく・え まじの こい』
と書かれていた。
交野 恋。この世界の、本当の主人公。
……満先輩と『コイ』は、同じ部活。
確か、部活の名前は『童話研究会』。
コイのお姉ちゃんが立ち上げた部活で、部長は満先輩。
部員はあたし達2人だけ。
このまま新入生が入ってこないままだと、現部員が卒業した後、廃部になる予定……、という、設定。
あれ? そういえば、コイは……あたしじゃない、ホンモノのコイは、一体どこにいるんだろう。
「ねえ、先輩……『コイ』は、どこにいるの?」
「……」
満先輩は、後ろを向いたまま、何も答えない。
あたしはページを捲り始めた。
ブーーーー。
ブザーの音が鳴った。
