Side:加藤 満
「危なかった危なかった危なかった危なかった……」
「不知呪う不知呪う不知呪う不知呪う……」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
上から、口を抑えてがくがく震えながらブツブツと何かを呟く恋ちゃん。
壁に向かってぶつぶつ呟きながら──頭をハンマー代わりにして、五寸釘を藁人形に打ち付ける白馬。
そして、机の下でガタガタ震えながら謝る不知。
そして……状況を全く理解出来ていない俺。
えー、ナニコレ……。
俺、ご飯食べに来たんやけど……。
「なんなんなんなんなにがあったーん! なあなあなあ!」
俺は一番重傷そうな白馬の元にものすごい勢いでスキップして近づき、ものすご勢いで肩を握り、ものすご勢いで肩を揺すった。
よく見ると藁人形は不知によく似ていた。
「俺だけ除けもんやんかー! いややー! 除けもんいやー! 教えて教えて教えてー! 一体全体何があったん!? どんな面白いことが……」
「……れ、恋が……」
王子は死にかけだった。ウケる。
「うんうんうん! 恋ちゃんが!?」
「不知……不知と恋が……キスを……」
「「してないっ!!」」
ふたりが仲良く声を合わせて否定する。
……あ、王子の魂抜けた。
俺はにんまり笑って恋ちゃんに詰め寄った。
「えー、恋ちゃん浮気ぃ? 間宮くんはもうええのォ?」
「ち、違うもん! 小説の練習だもん!」
「イヤーー! 小説の練習でキスやてこの子! 今日始めた会った男の子に! 最近の高校生コワーーイ!」
「ち! 違う……加藤先輩、本当に、ただの練習だ!」
割と真面目な顔で不知が弁解するもんだから、俺はちょっと白けてしまった。
「……分かってる。ただ、からかっただけ。そもそも、不知は『コイ』が好きな設定なんてないもんな?」
「そう! そうだ王子! 俺は! コイが好きな設定はない! だから、ある意味コイでもある恋のことは好きではない!
……だから今すぐ藁人形を切り刻むのはやめるんだ!」
「はあ、つまり、好きでもないのにキスしようとしたと……遊びだと……? そう、言いたいのですね……。
加藤先輩、恋、席を外してください。僕はこの男と話があります」
ボキン、王子は藁人形の腹を折った。
わお、せっかく俺が助け舟だしたのに、事態が悪化した。
「恋ちゃーん、王子は不知くんと大事な話があるらしいから外行こかー?」
「……ハイ……」
恋ちゃんがフラフラと俺についてくる。かわいい。
「あー、俺、そういえば図書委員だから──」
「今日はあなたの当番じゃありませんよね? ていうかこんな時間に図書委員の仕事はありません」
「自主的に、と、としょしつでほんのせいりを」
「はあ、なら、僕は図書室で本の整理でもしてるあなたを眺めながらあなたとお話しましょうか」
「え、おまえ手伝わないの……?」
王子はちゃっかり逃げようとする不知の首根っこを掴み、図書室へと向かった。
どんまい、不知。
