ブーーーーー。
またばたんばたんと校舎裏のセットが倒れて、食堂が現れる。
あたしと不知くんの顔の距離、1cm。
「……」
「…………」
……。
「なぜ少女漫画がいいかというと」
え、このまま話し続けるの?
「背景があって、キャラクターが鮮明で、キャラクター達に表情があって、動きがあって、時間の流れがあって……これが、『理想的な想像図』、だから」
「り、理想的な想像図……? そ、想像図ってみんな理想的なんじゃ……」
「そうじゃなくて……そうだな。
もっと補完すると、『作者にとって理想的な読者の想像図』だ。……ほら、大抵、携帯小説の胸きゅんするシーンって、作者もきゅんってするシーンだろ?」
「そうだけど、不知くん……『きゅん』って言葉似合わないね」
「……」
あたしは不知くんに軽くチョップされた。
「じゃあどうして読者にはきゅ……ときめいてもらえないのか……。
まあ、人の好みとかは抜きにしたら、『想像図の共有を出来ていない』のが、原因だ、多分」
そ、そういえば、満先輩が『のっぺらぼうのつるっぱげには萌えない』って言ってた……。
つまり、さっき白馬たちが言いたかったのは、こういうこと?
「書きたいシーンばかりを優先して、描写をおろそかにしたらせっかくの胸きゅ……ときめきシーンが台無しだ。
……参考にするのは、別にドラマやアニメだっていいんだ。
漫画だと、わざわざ一時停止しなくていいってだけで……。
自分が好きなシーンで練習してみてくれ。
慣れたら、頭の中に漫画かイラストを浮かべて、それをなおすように書くといい。
それはしばらくの間貸すから……」
あ、これ、不知くんの私物でしたか。
「れぇえええええええええん!!」
!?
白馬が、食堂の壁を蹴破ってきた。
……壁って蹴破れるものなの?
「ぶ、ブザーの音がなったんですけど、も、もしかして小説が完成──」
さて、長々と講座を挟んで忘れた読者さんも多いだろう。
もう一度言う。
あたしと不知くんの顔の距離、1cm。
「……」
「……」
「……」
あたし達3人は顔を見合わせた。
「ぎゃあああああああ!!」
「うわあああああああ!!」
「いやあああああああ!!」
そして、同時に叫んだ。
