黒歴史と四人の王子様

「ていうか、携帯小説じゃないの?」



「……恋。携帯小説の腕を磨く上で、少女漫画はすごく便利だ」



「そうなの?」



不知くんは、答えるようにニヤリと笑った。



なんて自信……!



……もしかしたらこれ、携帯小説の書き方について説明してる少女漫画……!?



あたしは早速不知くんから少女漫画を受け取り、読み始めた。



だけど内容は、女の子が遅刻しそうになり、走っていたら、男の子とぶつかって……っていう、王道中の王道の少女漫画。



(……こんなのが、秘密兵器?)



「恋。携帯小説を読んで勉強するのもいいけど、他人の表現を模倣するだけじゃ『自分の文章』ってのは出来ないものだ。



 じゃあ、自分の表現力を鍛えるためにはどうすればいいのか。答えが、これだ」



「こ、この、ベタベタな少女漫画に答えが……!?」



返事の代わりに、深く頷く不知くん。



あたしは、ごくりとつばを飲み込む。



「恋。この少女漫画を、小説にするんだ」



「え!? そ、それって、と、と、と、盗作!?」



「えっ!? ……あ、違うんだ。ただの練習だから。公開はするな」



なんだ……。びっくりした。



「このページを、みたまま、小説にするんだ」



「わ、わかった……つまり、このまえ白馬があたしにやらせた、『文を絵にする』ことと、反対のことをすればいいのね?」



不知くんはこくりと頷いた。



不知くんが指さしたのは、とあるページ。



二人の男女が、校舎裏にいる。



2人とも体操服を着て、ハチマキを頭に着けていたから、きっと今は体育祭なのだろう。



……この男の子。ちょっと間宮くんに似てる……。



主人公は、男の子に壁に追い詰められている。



主人公は真っ赤になってうつむいている。



『お前を……太郎に渡してたまるか』



『大地……』



(ごめん、大地……あたしは……太郎が好きなの)



(なのに、なんで……)



(こんなにドキドキするの……?)



そして、男の子は主人公に……。



キ……。



キ、キ、キス、を……。



「……れ、恋、キスシーンガン見しすぎ……」



「え、えええ!? し、して、してな、してな、してないよぉ!?」



「……別に、俺がキスしたいとかじゃなくて……女の子の気持ちが揺れ動くシーンを選んだだけ、だ……。



 そ、その、と、ときめく、だろ?」



「う、うん……」



不知くんは、ちょっと赤くなって目をそらした。



そして数分後。



「……できた!」



あたしはスマホを勇者の剣のように掲げた。



テッテレ-! 勇者恋はレベル2になった!



「やったな! よし、なら、上映するぞ」



「えっそれまたや──」



るの。



あたしが最後まで言い終わる前に、不知くんは指をパチンと鳴らした。



ブーーーー。



またあのブザーが鳴って、食堂がばたんばたんと倒れる。現れたのは、校舎裏のセットだった。