「はぁ…………」
私は教室の窓から、グラウンドで友達とサッカーをしている『彼』を眺めていた。
……かっこいい……。
あたし、永野 恋(ナガノ レン)。高校二年生。
恋って書いてレン。
突然だけど、あたしは恋をしている。
相手は、学年が一つ下の間宮 奏(マミヤ カナデ)くん。
女のあたしよりもサラサラツヤツヤの黒色の髪。黒くて綺麗な目……。
何よりも笑顔がとっても綺麗。
こんだけイケメンだから、もちろん女子には大人気。
だから、あたしは遠くから見ていることしか出来ないんだ……。
「はあ、間宮くん……やっぱりいいな」
「相変わらずベタ惚れだねえ」
茶髪ショートカットの女の子が、あたしに話しかけてきた。
この子はハナ。あたしの親友。
「……ていうか、恋。あんた、またラブレター渡せなかったでしょ」
ハナが呆れたように言った。
ハナの言う通り、あたしのポケットの中には、ラブレターが入っている。
……ハナに協力してもらって間宮くんへのラブレターを書いてから、1週間の月日がたったけど、未だに渡せてない。
「……まあ、そうだけど……なんでわかったの?」
あたしはハナに、『またラブレター渡せなかった』、なんて言ってない。
ハナはため息をついて、言った。
「……だって間宮くんになんて告白したら、あんたなんて絶対ふられるもん。
そしたら恋、間宮くん見るだけで泣いちゃうでしょ」
ガーーーン!
「は、ハナ、あんたそんなこと思ってたの!? ひどーい!」
「ひどくないよーだ。だって間宮くんに告ってる女子、みんな撃沈してるじゃん」
そ、それはそうだから言い返せない……。
間宮くんに告った女子はあたしが知ってるだけでもたくさんいるけど、あたしが知っている女子は全員撃沈している。
学年で一番美人の子も告白してたけど、その子もダメ。
多分、あたしなんて間宮くんの眼中にはないだろう。
「……やっぱり、ふられるかなあ」
あたしはポケットの中のラブレターに触れた。
「……い、いや……まだ、わかんないよ。
だって間宮くん、時々こっち見てるし……!」
ハナが慌てて言った。
多分、あたしが落ち込んだからだろう。
優しいなあ。ハナ。
「ふふ、どっち?」
「成功する! と、思う……多分」
ハナは弱々しく言った。
「いいよ。ハナ。アタシだって分かってるんだもん」
これが無謀な恋だって。
神様は理不尽だ。
手の届かない人なんて、好きになりたくなかった。
「……よし!」
「恋?」
「あたし、告白する!」
あたしは立ち上がってハナに宣言した。
ハナはびっくりしてたけど、「そっか」といって笑った。
どうせふられるなら、せめて思いを伝えよう!
そうじゃないと、多分いつか後悔するもんね。