月と太陽Ⅰ

『はっ、放してっ!』

「ちょっと黙ってろ!舌噛むぞ!」


脅し?……いや、ほんとに舌噛みそう……。ちょっと黙るしかないか……。



「よし、もう大丈夫か……。」

『大丈夫じゃないわよ!』

「あ?なんだよ?」

『あんたねぇ!これ、誘拐って言うのよ!?わかる!?』

「…あぁ、そういうことか。」

そ、そういうことって……!!

『ま、まさか、自分が誘拐してることに気づいてないの?』

「今、気づいた。」

『とにかく、降ろして!私は荷物じゃないの!』

「はぁ…ったく……ほらよ。」

『わっ…。』


あぁ、やっと地に足がついた……。


「で、お前誰だよ?」

『……あのねぇ!人に名を聞く前に!自分から名乗るべきでしょ!?』

「あー、はいはい。俺は陽(ハル)。お前は?」

『…沙夜。』

「沙夜?」