「取材した方がいい人?」
「そうそうっ、この先の一軒家の鳩瀬さんって人なんだけどねえ〜」
はて。
はとせ、とは初耳で聞いたことがない。
この島の偉い人でもないだろう、事前に調べた時には聞かなかったし、だとすると一般民だろうか?
「あらやだっ奥さんそれはダメじゃない??」
「いいのよぉ〜とにかく行ってみてっ、この先だから!」
少し急かすようにバシバシと俺の肩を叩くと主婦ふたりは軽く会釈をする。
「ぜったいあったほうがいいわよ!それじゃあね〜っ!」
買い物袋を掛けた一人の主婦が離れるともうひとりの主婦も離れ、そしてまた肩を強く叩かれてから背中を向けて歩いていってしまった。
まだ聞きたいことがあったというのに。
まるで台風のようだと思いながらこちらも会釈し、ふと教えられた名前を反芻する。

