「…あの、」 「海ですよ」 声をかけようとしたその刹那、彼女はこちらを振り向いた。 彼女の背後に見えるのは海。 夜の海というのは不思議と吸い込まれそうな、そんな空間だと思う。 少し小だかい丘にでも登っていたのだろうか。 木の椅子が何個かある広場に出ていたらしく、俺を見つめていた彼女はくるりとまた踵を返して、先に歩いていく。 すとんと椅子に座った彼女を見るとどうしたらよいのだろうかと少し迷ってしまう。