足音が近くになるに連れてまた緊張してきたかもしれない。
背筋を正しく伸ばしてボールペンを握り直す。

その手のひらが少し汗ばんでいて、滑りそうなボールペンを強く握り扉が穴が空きそうなくらいに見つめていた。

「遅くなりました、すみません。」

先ほど聞いたその声が扉の外から聞こえると扉が開かれ、彼女が居間へと戻ってくる。

彼女が先に入り、その後ろから入ってきたのは父親だろうか。

気難しい顔をしながら俺の顔を一度見ては目線を逸らし、ため息が吐かれる。

大きく聞こえた吐息に緊張が最大まで高くなるのを感じながらごくりと唾を飲み込んだ。

高まる緊張を誤魔化すように気にしないでください、と喉から絞り出した声は情けなく震えていたかもしれない。

それすらもわからないほどに俺は緊張しているようだ。