「へぇ。どういう心境の変化?何か楽しいことがあったんだ?あ!家族旅行とか?」
そう言ってから、俺は酷く後悔をする。
なぜか分からないけど、白田さんが顔を歪めて物凄く怒っていたからだ。
「白田さ…」
「違うでしょ!!」
「え…」
「あなたのせいでしょ!!!」
「え!?」
…えっと…
これは一体どういうことだ?
何で白田さんが怒っているのか分からない。
俺のせい…それって…
白田さんは、真っ赤な顔を俺から逸らすと、ショートパンツを握り締めた手に視線を落とした。
「…昨日あの後、黒崎君から連絡が来て少し外で会ったの」
夏風が優しく通り過ぎていく。
白田さんの柔らかそうな髪を弄びながら。
視線を前に戻した白田さんの横顔は、昨日お祭りの時に見たあの横顔と同じものだった。
彼女のこの横顔に惹かれたのは、お祭りの雰囲気のせいなんかではなかったのだと再確認する。
「黒崎君、吉川さんと付き合うことになったらしいわ。昨日放って行ったこと、きちんと謝ってくれた」
「そっか…」
吉川が黒崎と付き合ったことよりも、俺は白田さんの様子が気になってしかたなかった。



