やって来たのは、家から徒歩10分ほどの小さな公園。


公園内にはぎっしりと桜の木が周りを囲っていて、春になるとかなり穴場のお花見スポットだ。


本当に地元の一部の人間しか知らないような小さな公園だから、夏休み真っ只中だというのに人一人いなくて、少しばかりの遊具達が寂しげに妙な存在感を醸し出していた。



俺達は、ブランコ横のベンチに腰を掛ける。



「木陰が多くて、涼しくて良い公園ね」


「木が多い分、蝉がうるさいけどね」


「そう?私、蝉の声って嫌いじゃないから気にならないわ」


へぇ…何か…



「今、“意外”って思ったでしょ?」


「あ。分かった?」


白田さんは、口を尖らせて俺を睨む。


「私だって、嫌いなことばかりじゃないのよ。」


「でも、白田さん夏とか好きじゃなさそうだから。
蝉っていかにも夏って感じじゃない?」


白田さんは、黙って意味深に目を泳がせると、溜息をついて少し拗ねたような表情をする。


「…嫌いだったわよ。夏なんて。
だけど、今年は少し好きになったわ…」