「食べたいの?」
そう尋ねると、白田さんの肩が少しだけ上がった気がした。
そして、頬を赤らめながら俺を睨むようにゆっくりと振り返って、
「別に…」
と言って、また歩き出す。
な、
ななな、何だ今のっ!
ちょっと何か……可愛……
そんな思考の途中、
俺は遮るように、思い切り頭を振る。
何を考えた俺!?
俺は、胸の辺りを握り締める。
心臓を鷲掴みされたような、心地の悪い感覚に顔をしかめる。
何なんだこの感じ?
俺は、少しの間彼女の後ろ姿を見詰めていると、ゆっくりと屋台に目を移した。
素直じゃない子だな…。
吉川とは、大違いだ。
「すみません」
その呼びかけに、老人は目を開け朗らかな笑みを浮かべる。
「はいよ。」
「りんご飴、一つください。」
俺の視界の端で、彼女の足がピタリと止まった気がした。
それを無視して、俺は老人に代金を支払う。
「まいど。」
そう言って老人は、もう一度朗らかな笑みを見せると、またすぐに地蔵に戻ってしまった。



