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とまぁ、白田さんは俺の為になわば嫌々こうして回ってくれてるわけだけど…


「はぁ…」


白田さんは、さっきからこんな溜息ばかりついている。



そんな嫌だったのか…。


何かかえって悪いことをしたな。


と反省さえしてしまう。


やっぱり、今からでも引き返した方がいいか…。


「あのさ…白田さん」


「やっぱり帰ろうか」と言おうとして呼び止めると、彼女は全く違う方角をジッと見つめて足を止めた。


「…どうしたの?」


彼女の視線を辿ってみると…



りんご飴?



沢山の賑わった屋台がある中で、その屋台だけは細々と営業をしているようだった。


中には、りんご飴の他に、ぶどうやイチゴなんかもある。


それを売っている店主は、結構な歳を召しているようで、目を瞑って地蔵のように店番をしている。


そんな屋台を一心に見詰める白田さんの頬は、少しいつもより紅潮しているように見えた。



もしかして…