それから、何時間待っただろうか。


体はかじかみ、歯と歯がぶつかりカチカチと鳴っていた。


まだ、母親が帰ってくる様子はない。


「寒い…よ…。」


すると、遠くから…





「伊織っ!」



っと驚いた様な、怒った様な声が聞こえた。



振り向かなくでもわかってしまうんだ。


彼の名前を小さく呼ぶと、心の中がふわりと温かくなった


「伊織!!」


お願い!来ないで!
こんな惨めな私を見ないで!っと心の中で思っても、
彼はドンドン距離を縮めてきた。


「伊織。」


私の名前を呼ぶと、ギュッと抱きしめられた。


「…奏多く…ん」 


私は、彼の名前を呼ぶと、意識を手放した。