何も持たず、自宅を飛び出した私は…ボーッと歩き続けた。 ふっと足が止まり視線を彷徨わせると… 「奏多くんち…。」 足は自然と楽しかった思い出がある場所へと動いていたんだ。 暖かい家。 暖かい家族。 私には…触れていい場所ではなかった。 急いでその場を離れようとして踵を返すと… 「……伊織……?」 愛しい。 愛しい人の声…。