その背中、抱きしめて 【下】




「高遠くんは基本、どこに上げてもどんな悪いトスでもちゃんと打ち切っちゃうんだけど…」


そこまで言うと、桜井くんが私に向かって山なりにボールを投げた。


それをジャンプトスする。


「高遠くんはここ。ここに綺麗にトスが上がると、惚れ惚れするくらいすごいスパイクを打ってくれるよ」



高遠くんの会心のスパイクを思い出す。

軌道が見えないくらい速くて角度のあるスパイクをインナーに打ち込む。


インナーって、ライトから打った時は相手のライト側のアタックライン付近のこと。

反対にレフトから打った時は相手のレフト側のアタックライン付近。

ストレートやクロス方向に打つよりもジャンプ力も筋力も技術も要るから難しいんだけど。

高遠くんはインナー打ちが得意。


(カッコイイんだぁ、アレ)


思い出して顔がほころぶ。

ちょっとだけ嫌なことを忘れて、ただ高遠くんのスパイクだけを思い出してた。