その背中、抱きしめて 【下】




「羽柴くんはちょっとネットから離れたトスの方が得意だよ」


そう言って、私はレフト側のアタックラインの前に立った。


「ここね。で、打点はネットから40cmくらい上」


今度はセッターの位置に立って桜井くんにボールを渡す。

私に向かって投げるように言うと、山なりのボールが飛んできた。


ジャンプトスで早い平行トスを上げる。

スパイクされないボールはコートを超えてフェンスに当たって落ちた。


「あそこにこのぐらいの高さで上げると、ちょうど羽柴くんが1番打ちやすい感じ。また後で紙に書いて教えるから、とりあえず今は何となくわかってもらえればいいよ」


そして、私は回れ右をしてライト側に向いた。


「次、高遠くんね」


高遠くんの名前を呼ぶと、胸がチクリとする。

嫌な記憶が鮮明な映像になって頭を駆け巡る。

何度も、何度も。


「そっか、桜井くんは中学で高遠くんにトス上げてるんだもんね。説明いらないか」

「いや、ちょっと打つ位置とか高さとか変わってる気がします。ネットが高くなってるからかもしれないけど。教えてください」


桜井くんはバレーに関してすごく真面目。

何でも吸収しようとする。