「羽柴くんはちょっとネットから離れたトスの方が得意だよ」
そう言って、私はレフト側のアタックラインの前に立った。
「ここね。で、打点はネットから40cmくらい上」
今度はセッターの位置に立って桜井くんにボールを渡す。
私に向かって投げるように言うと、山なりのボールが飛んできた。
ジャンプトスで早い平行トスを上げる。
スパイクされないボールはコートを超えてフェンスに当たって落ちた。
「あそこにこのぐらいの高さで上げると、ちょうど羽柴くんが1番打ちやすい感じ。また後で紙に書いて教えるから、とりあえず今は何となくわかってもらえればいいよ」
そして、私は回れ右をしてライト側に向いた。
「次、高遠くんね」
高遠くんの名前を呼ぶと、胸がチクリとする。
嫌な記憶が鮮明な映像になって頭を駆け巡る。
何度も、何度も。
「そっか、桜井くんは中学で高遠くんにトス上げてるんだもんね。説明いらないか」
「いや、ちょっと打つ位置とか高さとか変わってる気がします。ネットが高くなってるからかもしれないけど。教えてください」
桜井くんはバレーに関してすごく真面目。
何でも吸収しようとする。

