その背中、抱きしめて 【下】




さくらちゃんたちに断って、お弁当を持って洋平くんと中庭へ行く。

その途中、洋平くんは色んな人に声を掛けられていて、改めて人気者なんだなぁって思った。


「あ、あそこがいいや。ゆずおいで」

中庭に出るといくつかのベンチは先客がいて、洋平くんが目を付けた日当たりのいいベンチに座った。

そよそよ吹く風が気持ちいい。

ベンチのすぐ後ろにある木の葉っぱがサワサワと小さく音を立てた。



「もしかして弁当自分で作ってんの?」

洋平くんが私のお弁当箱を覗き込む。

「うん、先月から作る練習してるの。まだまだ料理下手なんだけどね」


先月高遠くん家に泊まった時以来、料理の練習のために始めたお弁当作り。

レパートリーも少ないし、見た目もあまり良くなかったりするけど…毎朝頑張って作ってる。


「ゆずは何に対しても頑張り屋だよな。あんまり気張ってるとそのうち張り詰めてた糸が切れて取り返しのつかないことになるから、ほどほどにしとけよ」


笑いながらそう言った洋平くんの横顔がキレイで、一瞬ドキっとした。



「そういえば昨日電話してた時泣いてたけど、ずっと泣いて帰ってたん?」

「…ううん。駅で洋平くんと別れた後、高遠くんがホームで待ってたの」


「え?マジで?」

パンにかぶりつこうとした洋平くんの口は、そのままあんぐり開いたままになった。