「橘くん!わたし、また橘くんの好きなところ見つけちゃった!!」
「!?」
あら、まただ。
あんまり言いすぎるとかわいそうかも。
「ふふっ」
帰り道、橘くんは数学が得意とか親が仕事で家を出てるため独り暮らし状態だとか、少しだけど橘くんのことを知ることができた。
他愛もない話しをしているとあっという間にわたしの家の近くになってしまった。
あー、もうバイバイかぁ…
「橘くん、わたしの家もうすぐだからここで大丈夫だよ!」
「……いいよ、家まで送る。」
「……いいの?」
コクンと頷く橘くん。
胸がキューンとなったのを感じた。
「橘くん!今日はありがとう!!ほんっっっとに楽しかったし嬉しかった!!」
「…そっか……じゃあ。」
「うん!また明日ね!!」
…………
「橘くん?どうしたの?」
橘くんはそこから動き出そうとしない。
「家…入りなよ。」
「でも橘くんを…」
「いいから」
ほんの少しだけ強気な橘くんを見たわたしはノーなんて言えず渋々家に入った…
しかーし!
だけどやっぱり橘くんが見えなくなるまで見てたいっていう気持ちに勝てず、玄関に入るとすぐさま外が見える窓に駆け寄った。
わたしが家に入ったのを確認すると橘くんは背を向け歩き出した。
………え?
なんで…………
なんで、さっき来た道を帰ってるの?
「もしかして、橘くんの家逆方向だった…?」

