ヒーローが来たうれしさをひとしきりしゃべりまくって、健は寝てしまった。


ひとり、ビールをのみながら、ぽつんとソファーに座ってる私は、ただただケータイとにらめっこをしていた。



藤居くん…


かけようか…


やめようか…






そこへ…


♪♪♪♪♪♪~




…っ!


ケータイが鳴った。


――――雅史からだった。





「もしもし。」

「あ…オレ。健はもう寝ちゃったよな…」


「うん。」


「やっぱり、しばらく帰れそうにないんだ…」

「…そっかぁ。」

「…ひとみちゃん、俺、寂しくない訳じゃないんだよ。ひとみちゃんとも一緒にいたいし、健だってかわいくてしょうがないんだよ…。帰る度に大きくなってるのを感じると、毎日毎日、一日一日の健もみていたいんだ… けど…」


雅史は自分の気持ちをゆっくりと、じっくりと話していた。

私は、あいづちを打ちながら、聞いているようで聞いてなかったのかも…


「…だから、もうしばらく待ってて。なんとかするから。」

「………。」

「ひとみちゃん、聞いてる?」


「え…うん。いいの、もう。無理しないで。健には明日、パパから電話があったこと伝えとくから。もう遅いし、寝て。私も寝ます。おやすみなさい。」




私はかなり冷たく電話をきってしまった。

―――――このとき、もっと丁寧に雅史に向き合ってあげてたら…と、後から考えることになるとは思ってもいなかった。





雅史との電話を切った後、なぜか、もう迷うこともなく、藤居くんに電話をした。