帰りの電車の中、健は疲れ果てて眠っていた。
私は、藤居くんのことを思っていた。





藤居くんとの出会いは、実はあまりハッキリは覚えてない。
ただ、気がついたらすっかり仲良しだった。


陸上部では、彼は400mハードルの選手だった。

スラッと背が高くて、細身なのに力強く走る彼…
本当にキレイだった。
私は、走る彼を見るのが、すごぉく大好きだった。


けして、イケメンではないけれど、クシャッと笑う顔や、ゆっくりした仕草が、女心をくすぐる…というか、密かにモテていた。

何人かの女の子に
「藤居くんに告白したいんだけど…」と相談をうけたことがあった。

そのなかには先輩もいた。

体育館の横の階段で、先輩と藤居くんが深刻そうな顔をして話しているのを、私までなぜだかドキドキしながらチラ見してたなぁ…

結局、先輩はフラれて、でも、すごく優しくフッたみたいで、先輩はもっともっと藤居くんを好きになってしまったと言っていた。


見た感じ、さっぱりしててクールに見える彼。
でも、めちゃめちゃやさしいのよね。

そのやさしさに触れてしまうと虜になっちゃうのかも…