男女兼用で居られる湯上り所のような所で、
おじさんと合流した。
女の人は、ジェスチャーで伝えるだけで、
最後まで一言もしゃべることはなかった。

「お?君は、ここの湯に入ったんだね。
 んー、この甘い香りは、

 色の湯【しきのゆ】か。

 何色にも染まらない、君らしい湯だ。
 黒としろの両極端だった君が、
 このお湯によって、透き通った虹色に
 輝いている。よかったよかった。
 君はどこか常に警戒心の塊というか、
 気をはって偽って生きてきたね。
 それが少しまろやかになった」

対して、おじさんはおしゃべりで、
よく笑う。

おじさんはそう言って、

大変だったね、つらかったね、

と頭を撫でた。

おじさんの言うことはよく当たっていた。