おじさんに連れられてやってきたのは、
昨日入るのを躊躇ったトイレの場所だ。

「さて、行こうか。
 ここは一見ただの廃屋だがね。  
 実は、”向こう”の旅館と繋がっている。
 利用者は、人に見える者も居るが、 
 人ではない。
 ま、俺もなわけだが。

 押入れの中にも、物置の中にも歪む場所が
 あったと思うが、そこには後で行こう。
 歪みに入るんだ」

そう言われて、
そっと歪みに足を踏み入れた。

すると、薄汚いだけの廊下が
歪んだと思ったら次の瞬間には、
きらびやかな装飾が施された、
カーペット敷きの床に
大理石の壁になっていた

ちなみに、トイレにあった、

男性用、女性用

と日本語で書いてあったはずの文字は、
見たこともない文字に変わっていた。

しかも、文字が動いている。

でも、不思議なことに、読める気がした。
頭の中に文字が入ってきて、
いつものように目を通して、
動いて見えるのだ。

思わず、ここから先には進んではいけない、
そんな気がして、足を止める。

先を歩いていたおじさんに、
怖いのかい?俺が居るから平気だよ
なんて、また笑われてしまった。