「さぁ、ここも同じだ。歪みに入ろう」

そう促され、歪みに入る。

また足を踏み入れた途端世界が歪み、
物置だったはずが、今度はどこかの建物の
屋上に居た。

遠くまで町並みが見渡せるから、
恐らく、ここは
相当な高さのビルなのだろう。

風がとてつもなく強い。
簡素な作りなのか、たったそれだけでも
ビルが揺れる。

落下防止の柵も、錆びていて、
しかも簡単に乗り越えられそうな
高さだった。

先ほどの旅館は眩しいほどの灯りと
色に包まれていたのに、ここは、
色が全く無い。

常に空は曇り、見渡す限り、
建物はコンクリート打ちっぱなしのような
灰色ばかり。

お店もあるし、一応住民も歩いているけど、
住民は具合の悪そうな肌の色をし、
どこか不安げだった。

建物も荒廃し、
落ちかけた看板に灯りはない。
ただ、文字は、先ほどの旅館にあったものと
同じで不思議にうごめいていた。