嗚咽、乱れた息、鼻を啜る音、花本美咲の名前を呼ぶ声。


まるで、画面の中の世界だった。

僕はただ、泣くこともせずに立ち尽くしていた。


それから僕らは家へと帰された。


家に帰って、テレビを付けた。

丁度、花本美咲の事故を報道していた。


ローカルニュースで流されたそのニュースは、他の地域では流されないか、もしくは一瞬だけしか報道されないだろう。


花本美咲の顔写真が映し出される。

こんな顔だっただろうか。

花本美咲は、こんなに儚げに笑うような人だっただろうか。

もっと口を大きく開けて、大声で無邪気に笑う人だった。


彼女を知らない人々は、気にも留めないだろう。

彼女の性格、周りの評価、彼女の最期。

そんなこと、他の人々からすればどうでもいいことなのだ。


なんとなく、それが虚しく感じられた。

それと共に、花本美咲の魂に寄り添いたいと思った。


この感情は、何だろうか。

悲しみでもない、憐れみでもない。

ただ、花本美咲を思っていた。

もう一度、声を聞きたいと思った。

もう一度、あの笑顔を見たいと思った。


そう思って目を閉じ、目を開けた。

そして、僕は言葉を失った。


目の前に、花本美咲がいたから。