「みんな、泣かなくなった。ニュースを見ても、何も思わなくなってた。みんな、佐崎くんのお陰だね」


僕は、自分の過ちに気づいた。

悲しいニュースを消すことも、涙を消すことも、ただ逃げているだけだった。

人の悲しみから逃げ回って、人の悲しみに寄り添う術すら、僕はこの世から奪ってしまっていた。

ニュースを見ても何も思わなかった。

それは、寄り添う術があるにも関わらず、自らそれをしようとしなかったことを示していた。


何も、何も解決などしていなかった。

僕は、彼女の家族から本当の幸せを奪ってしまったように思った。


「ありがとう、佐崎くん。バイバイ!」


花本美咲は最後まで笑顔だった。

僕は、彼女の本当の笑顔を知っていたのだろうか。


彼女は静かに消えていく。

僕は、涙で霞む空を見上げた。


僕にはかからない僕の魔法。

僕だけが涙を流し、僕だけが彼女を知っている。


そして、僕だけが彼女がいなくなってしまったことに涙を流す。

僕だけが、僕だけが。


僕だけが、彼女を愛しく思う。

僕だけが、彼女を愛している。