それから僕は、目を閉じて、この世から涙が消えることを願い、目を開けた。

そして、僕は周りを見た。


「花本、本当に死んだのかな」

「私もまだ、どこかにいる気がするよ」

「やっほー、って入ってきそうだよね」


悲しみに暮れる声、しかし、表情は随分と冷酷なものだった。

泣くことを奪われた彼らは、表情を変えなかった。


今ごろ花本美咲の家族も、泣くことをしなくなっているだろう。

その代わり、どんな表情になっているだろう。

それが少し、怖かった。