時間はあっという間に過ぎた。



「俺は、そろそろ帰らないと」



そう言われて、回していた手を放した。


泣いた後だからだろうか。


帰って欲しくない

そう言ったらこの人はどうするだろう。



「そんな可愛い顔されたら、帰るに帰れ
ないだろう」



やっぱり、迷惑になって仕舞う。


ワガママを言ったら、叩かれる

この人にそんなことされたら――。


助けを求めたら、この人と竜崎さんと
一緒に居られるだろうか。


嫌いになられたら、どうしよう……。


でも、竜崎さんの側に居たい。


こんな、苦しいのは嫌だ。


けど、竜崎さんの迷惑にはなりたくない。



「依利君、また来るから」


涙を掬い、頭を撫でられた。



「はい」



僕は、それだけ答えた。

口を開いたら、きっと竜崎さんを困る事を言ってしまう。



そして、竜崎さんは帰っていった。