僕が、高校に上がるとき。


父は、家庭教師を雇った。


気難しい父が選んだ人だから、
人当たりも良く、頭の冴える人だろう。





      家の自室へ


「君が、蔵 依利(クラ ヨリ)君だよね。

俺は、竜崎 陽裕(リュウザキ ヒロ)

宜しくね」


「宜しくお願いします」


僕は偽る。


本当は、人と関わりたくない。

でも、父の顔を潰したくない。



だから、笑顔という仮面を張り付けた。

偽れば、誰でも心を開く。

そのままの自分を誰も受け入れてくれる
はずがない。


なら、相手に好まれる偶像を作ればいい。


簡単なゲームだ。



この人もこれ以上、入ってこない。


誰も僕の本当の姿を知らない。




だって、自分にも本当の姿が見えては
いないから……。