マユが携帯を手にとるのを眺めながら思った。

気持ちをぶつけられるマユがうらやましい───、と。


私はハルトに想いを伝えようと少し前から思うようになっていた。

───ハルトも私を想ってくれているかも知れない‥。

そんな淡くも甘い考えも、
ハルトと共にするりと逃げていってしまったのだろうか‥。


マユは電話の相手に向かって心を吐き出す。

───もうこれからは許さないんだからね!

───ホントに怒ってるよ!

───え?‥私だって好きだよ!




窓の外を眺めながら頭の中を通り過ぎる親友の声。



きっと‥




ハルトに電話は通じない。



苦しくなって目をつぶる。





「‥───ナナ?」



電話を終えたマユが首をかしげて覗き込んでいた。


「‥あっ!電話、終わった?」


「うん。」


「なんか普通にあてられたんですけど〜!仲直り出来たみたいで良かったじゃん!」

私は笑う。


「うん!電話して話しして良かった!‥ナナも、かけようよ!ねっ?」