「お待たせ!」


ハルトが車の中から声をかけてくれた。


「ううん!」


助手席に滑り込むと車はゆっくりと発進する。


「どこ行く?」



ハルトが前を向いたまま聞く。


「うーん‥‥夜景!」


「夜景かぁ‥‥よしっ!行こう!」


ほんとはどこでも良かった。

ハルトと行けばどこでも嬉しいから。


ハルトはこの辺では人気の夜景スポットに連れて来てくれた。


もちろん行くのは初めて。


「着いたよ〜!下りる?」

「うん!」


車を下りてスタスタと慣れた様子で歩くハルトに心がざわめいた。


「‥‥よく来るの?」


つい口から出たヤキモチ。
きっとヘンな顔になってただろうな…。


でもハルトは気を悪くした風でもなく言った。


「昔ね!」


「昔?‥彼女とぉ?」


「‥ははっ!」


ははっ!?
何笑ってるの!?
少しむくれる私にハルトは笑って言う。


「昔のことだよ!今はナナといるのが一番幸せ!」


「えっ‥!?」


不意打ちだった。


嬉しい…けど…
どういう意味…?


「ありがとっ!」


ワンテンポ遅れて笑った。