あの小さな無防備な姿を思い出すと、無条件で涙が流れる。



「…産むよ。私、必ず…産む!」



「…ナナ…」



マユは言葉を探しているみたいだった。



しばらく沈黙が続いて、やっとそれを破ったのはマユだった。



「親…は…?」



ようやく出た言葉はこれ。


「うん。言ったよ!」



小さくうなずくと続けた。


「もし…ヨースケの子だったら…どうするの…?」



ドクン。



胸がえぐられる。

でも、

もう逃げない。



「…それでも、私の子供だよ?」



「………!!」



マユは本当に言葉を失ったようだった。

何度も何かを言おうと口を開きかけては閉じた。






静かな時が流れる。


マユの部屋のオルゴールの鳴る壁時計が一度だけ、鳴った。


なんども聞いているのに曲名すらわからない、その美しいメロディ。