小さな花 〜あなたを愛した幸せな時間〜

「ハルトの赤ちゃん、堕ろしたくないし…っ…!」


…ヨースケの赤ちゃんかも知れない、そう思ってるくせに…。


「…だから…!」


「ダメっっっっっ!!!」

マユが突然大きな声で叫んだ。


「ダメ!ダメ!ダメだよ!ナナ!無理だよ!うちらまだ高2だよ?16だよっ?ダメ!ダメ!」


わめくように口にするマユを私はただ見つめていた。


「でも…」


マユの気持ち、わかってた。

どこの世界に親友に子供を堕ろさせたい子がいる?


マユは、私のことを想って、心を鬼にしてくれているんだ…!


伝わってるよ。


ちゃぁんと、マユの気持ち、伝わってるよ…。


でも…。





「マユ…私もね、実は…堕ろそうと思って…産婦人科に行ったの…。」



「え…っ!?」



マユが顔を上げる。



「でね…見ちゃったんだぁ…小さな赤ちゃん…。こんなにちっちゃいのに必死に生きようとしてるんだよ…。」



話ながら涙があふれた。