確かに産まれてきてもこの子に父親はいない。


でも、お母さんがそうしてくれたように、私もこの子を両親分愛せばいい。


二人分でも何人分でも、思いっきり愛してあげればいい…!!



私はお母さんの腕の中で決意する。

昨日、キッチンでした決意とは比べ物にならない思いで。




「お母さん。ごめんね。私、産む。」



私はお母さんの背中に手を回した。

ギュッ…って抱きしめる。



「頑張るから、精一杯頑張るから…力を貸してください…お願いします…!」



「ナナ…」



お母さんは私を抱きしめていた腕をほどき、私を見つめた。


「…半端な覚悟じゃ、出来ないわよ!」


真剣な目だった。


「はい。」


「いっぱい苦しいこと、あるのよ?子育てって夫婦でも大変な大仕事よ。それをナナ、ひとりでするのよ?!」


「はい!」


お母さんはそこでプッツリと口を閉ざした。


カチカチ…と時計の秒針の音だけが響いていた。