家に帰ると少しだけ大きな声で


「ただいまっ」


って言ってみた。


タタタって小さな足音がして、チカがリビングから顔をのぞかせる。


「おかえりっ!」


久しぶりにチカに微笑みかけた気がした。



ベッドのうえに仰向けになるとハルトの話を思い出していた。



───死。



それは私の中でとっても遠い存在に思えていた。


簡単に


「死ねばいいんだ」 


なんて思っていた自分を悔やんだ。



大切な人を

───親友を

───恋人を


失って苦しんでいる人がいるっていうこと。


知らないわけじゃなかったけれど身近に感じてはいなかった。


ハルトの話は私にとって

とても、

とても‥‥


大きな何かをくれたんだ。

人として。

自分を見直す機会になった。


でも‥‥


私の頭はハルトでいっぱいになっていて、ハルトの苦しみなんてちっともわかってなかった。


お子さまな私はちっともわかっていなかった。


ハルトのつらい胸の内を‥‥。