小さな花 〜あなたを愛した幸せな時間〜

もうヨースケの子かもしれない、とかそんなこと関係なく私はこのお腹の中の赤ちゃんを「私の赤ちゃん」として愛し始めていた。


ううん、愛していた。


だって…もう、産もうって決めたのに…。




「ナナ…辛いけど赤ちゃん、諦めよう?」


「…っ…」


涙があふれた。


「ナナが高校卒業して、大人になって、それからきっとまた赤ちゃんを産める日が来るから…。ね…。」


お母さんの目から涙が伝った。

その涙はお母さんが握っている私の手の甲をしっとりと濡らした。


お母さん…でも…。

でも、このお腹にいる赤ちゃんはもう2度と存在しないよ…?

この子は世界で1人だけなんだよ…?


きっとお母さんは私の心の中をわかっているんだろう…。


もうお腹にいるんだもの。

生きているんだもの。


そして、その命を失う悲しみ…。

苦しみ。

辛さ…。



それを知りながら、

それでも私を止めてくれてるんだよね…?

私のために、心を鬼にして…。