小さな花 〜あなたを愛した幸せな時間〜

ハルトはナナコの知らないシュンを、

ナナコはハルトの知らないシュンを、

お互い知らないシュンを話し続けた。


そして、


「‥‥何でシュン、死んじゃったんだろ‥‥」


またナナコの目から涙があふれた。


「私も死んじゃおうかな‥‥」


「死んだらダメだよ」


ハルトは言った。


「なんで‥‥!?‥‥なんでだめなのっ!?」


「シュンはそんなこと望んでない。ナナコちゃんのことが大好きだったシュンが‥‥そんなこと望んでるはずないよ。」


ナナコはしばらくハルトの胸元を見つめていた。



そして、



「ゴメンね‥‥そうだよね。」


一言そういったきり黙った。




      ☆☆☆




「それからケータイのアドを聞いたんだ。心配だったから。」


ハルトは淋しそうに言った。

「でも俺、慌ててたからアパートにケータイ忘れてきててさ、喫茶店のナプキンにアドレス書いてもらった。」


「うん」


「‥‥で、メールしてみたらアドレス入力、間違えたみたいで…今ここにいるナナちゃんのところにメールしちゃったわけ!」


ハルトは笑った。
淋しそうな笑顔だった。