「そっか…。」


そう言ってギュッって抱き締めてくれたマユ。


「辛くなったらいつでも聞くから。」


少し首を傾けて切なそうに言うヤヨ。



辛かった。

ホントに辛かった。

でも…

言えなかった。

全部を伝えることは出来なかった。

ハルトがいなくなってしまった悲しみを伝える言葉なんて見つからない。

この悲しみを伝える手段なんてどこにもない。


ハルトを想えばどこででも泣けたし、
生活のあちこちでハルトを感じた。


ハルトと見た映画のDVD。

ハルトと話した乗りたい車。

一緒に食べたチョコレート。

車で通ったでこぼこの砂利道。

美味しくなかったラーメン屋さん。



ハルトに結び付くツールは私の毎日のあちこちに撒き散らされていて、逃げることなんて出来ない。


この顔も…
あの服も…

愛された体ですら…


今は苦しい思い出にしかならない。



もうない。

もうどこにもない。


ハルトの私。


ハルトだけの私…。