ハルトが私の頭をなでる。

優しい、優しい手だった。



「……幸せに、なれよ……。」



……なれるわけ、ないじゃん……。

ハルトなしで幸せになんて…。

なれるわけないんだよ…?


でも私はその言葉をグッと飲み込んだ。



吐き出したら、また困らせるだけだから…。



「…サヨウナラ…」



私はハルトの体に回していた腕をゆっくりとほどく。



「……ナナ……」



ハルトの声を背に私は静かに部屋を出た。


私をよぶハルトの最後の声。
今も心の中に響いているよ…。


“ナナ…”

そうもう一度呼んで欲しいって、未練たらしく願ってしまうんだ…。


叶うはすがない願いだとわかっていても……。