「キャハハハ」


ドアの向こうで溢れる笑い声。

私―ナナ―は聞こえないようにコンポのボリュームを上げる。

毎日おんなじ繰り返し。

笑い声なんて聞きたくない。

家族なんて、


家なんて、


ダイキライ!



私はやりかけていた髪の毛のセットを再開する。


腰まであるロングを丁寧に巻いていく。


15才の夏、

私は壊れてる。

毎日夜になると髪を巻く。

きっとまだあどけないだろう瞳にくっきりとアイラインを引く。

コンプレックスの小さなくちびるにグロスをのせる。


繰り返し。
毎日同じ繰り返し‥‥。


どこにいくのかわかんないのに出かける用意して家を出る。

15才の私は自分が世界で一番不幸だと思ってた。

悲劇のヒロインになりすましてた15才の私も、


あと少しで16才になる───。