その力に促され私は教室の中に引き込まれる。


そこは視聴覚室だった。


黒い暗幕と鍵のある唯一の教室。


「ナナッ!」


サトルは教室に鍵をかけると私を強く抱きしめた。


暗い暗い視聴覚室の中。


私の泣き顔を隠してくれる暗幕と、


私たちを二人きりにしてくれる教室の鍵。



「‥ごめんね‥泣いたりして‥」


ふたりきりの安心感の中で私の口が開く。


「いいって!言ったろ?頼れって!甘えろって!」


サトルはそういってまた抱きしめた腕に力を込める。


「ナナ‥何があった?話せよ?なぁ‥?」


サトルの言葉が泣いてる。

苦しい、
って、泣いてるよ‥。


「あいつか?好きな人出来たって言ってたそいつのことか?」


サトルが搾り出すように言葉を繋ぐ。


「‥‥うん‥でも‥」


「なんだよ?」


「‥‥」


「ナナッ!」


サトル、もうダメだよ‥。

私‥


サトルに甘えてしまうよ‥。






「その人にフラれちゃったの‥」



私は言ってしまった。



今までのハルトとのことを。



そして‥



あの時のメールの台詞を‥。