小さな花 〜あなたを愛した幸せな時間〜

私はそのメールを開くと同時に‥


───消去した。



1秒でも早く忘れたかった。


1秒でも早く消し去りたかった‥。


聞きたくない言葉。

受け入れたくない言葉。



でも、

メールは消去出来ても

心の傷は消去出来ない‥。


私の心にハルトからのあのメールは永遠に消えない。


消せない傷‥。

消せない言葉がリフレインする‥。

何度も‥

何度も‥。


「‥支度しなきゃ!」


私は忘れたくてわざと明るく独り言を言う。


いつものように制服に着替える。


スカートは3回折って、

だぶだぶのベージュのカーディガンをはおる。

カーデの一番下のボタンは外して‥。


いつも通りの手順を繰り返して傷をかくそうとする。



「今日は全国的に秋晴れになるでしょう!」


テレビの中でにこやかに笑うお天気お姉さん。


でも外に出た私を待っていたのは灰色の空。


朝の冷えた空気も


匂いも


鳥の声も


いつもと同じはずなのに‥

‥暗い。


青い空‥


また


見れるかな‥‥