ズボラ女が恋する瞬間

ふと視線の高さにある、桜の木の枝に歩みが止まる。


「中身は女なんだな。桜に見惚れるって」

「生まれてからずっと、女ですけど」

「だろうな。お前、オシャレに興味ねぇの?」


それ、遠回しにダサいって言ってるよね?

別に、良いんだけどさ。

それに、自分でも理解してるし。


「ないわけじゃないけど、オシャレしたところで、仕事が出来るようになるわけじゃないから」

「まぁな。でもさぁ、オシャレって女の楽しみの一つなんじゃねぇの?」


楽しみ・・・だったよ、あたしも。

学生の頃は、周りの目もあったし。

でも今のあたしは見せる人もいなければ、見てくれる人もいない。

そんなあたしがオシャレしたところで、時間とお金の無駄使いだ。