ズボラ女が恋する瞬間

期待していたつもりはなかったが、内心落ち込む。


「そういえば、今日は車なんですね」

「あぁ。今日は遅くなりそうだからな」

「お疲れ様です」


特に何も考えず発した言葉を、再び自分に向けられる。


「お前も、お疲れ」

「え?」

「俺は、基本的に仕事を余すことはない。周りのフォローやら、どっかの誰かさんのデザイン待ちのせいで残業する羽目になることはあるが」


何、その遠回しな嫌み。


「だから、何ですか?」

「お前、今日残業だよ」


今、何と・・・?

あたし、まだ会社にも出勤してないんですが。

それなのに、残業って・・・


「あの、あたしの聞き間違えですかね?今、残業って言いました?」

「言った」


どうやら、聞き間違えではなさそうだ。