ズボラ女が恋する瞬間

距離が離れ、心も離れた。

だからと言って、距離が戻ってもあたしたちはもう無理だ。

彼から別れを切り出されたら、どんなに楽だろう。

彼が向こうで新しい人を見つけて、幸せになってくれたら良いのに。

そう思うのに、今でも彼の言いつけを守ってる自分が嫌い。


『化粧なんてするなよ』

『スカートなんて履くなよ』

『オシャレなんかするなよ』


彼に嫌われないように、必死で守ってる自分につくづく呆れる。

ふと視線の先にある、姿見を見て呟く。


「ダサッ」


ノーメイクに眼鏡。

きっちりと結んだ、一本髪。

適当に選んだ、パンツとジャケット。

ホント、ザ・ダサい女。

昔はあんなにオシャレが好きだったのにな。