『らしくなんかねーよ。ばーか』
そう言って葵は、私の隣に座った。
『強がんなよ。そんな陽花は見たくない。』
下を向いてはっきりと見えていた地面が、この一言でぼんやりに変わった。
『葵…のせいだよ。』
私は力のない声でそう言った。
『葵がいてくれたから、中学校生活、少しだけ楽しかったの。だけど、いなくなっちゃったからみんなと、うま、く…』だんだんと言葉がどきれとぎれになる。
好きだったんだ。葵のことが本当に。
私は、傷つくのがこわいんだよ。強がってるふりをしているだけで、本当は繊細で誰かに守ってほしいんだよ。葵に伝えたい。だけど、もう何から話していいのかわからない。

『そうだったのか…。陽花は、考え方が大人なんだよなぁ。合わなくたって、当たり前だよ。ごめんな、なんにも言わずに…』
泣いている私を、葵は抱き寄せて頭をなでてくれた。
『自分の気持ちを持つのは、辛いことなの。だれかと違うと、すごく自信がなくなって、楽しくなくなって、離れていかなければならなくなっちゃう。笑っていることが辛いの。だから、周りに合わせることにしたの。自分の意見も持たないで、淡々と過ごそうって思ったの…』
なのに、私の心の中には『想い』がたくさん詰まっていた。
『そうだな、陽花は一生懸命に考えて、この結論をだしたんだもんな。でもな、それは違うんだ。俺がなんで陽花を好きになったか教えてやるよ。』
『うん…』
『陽花は、いつもクラスにいる時笑ってて、その笑顔を見るのが俺は好きだったんだ。でも、屋上に行く時の陽花はまるで別人みたいにキラキラしててクラスにいる時に見た笑顔よりもすごく可愛かったんだ。けど、好きになる気持ちが大きくなるにつれて、気付くこともたくさんあったんだよ。』
『私を見ていて、気づいたこと?』
『ひとりでいる時や、友達が悩み相談をしている時、陽花は寂しげな表情だったんだ。わけがわからないみたいな感じかな。意見を求められても、誰かが言った言葉を違う言葉に変換して言ってるだけだったんだよ。それで思ったんだ、この子は感情を押し殺しているんだって。』
『じゃあ…!』
『そう、あの雨の日に出会ったのは偶然じゃないよ。必然なんだ。俺は、来ることが分かっていて会いに行ったんだ。』