その瞬間、そう、きっと。
私はあなたに恋をした。
入学式---
高校生になった。
今日はその高校生としての最初の日
私、天川ひかる(てんかわひかる)は桜の季節、というより未だ続く花粉症の季節に入学式を迎えた。
新しい制服に、
マスクに
ティッシュボックス一箱抱えて
完全防備。
--留学したかった私は海外留学を目指すコースのあるこの瑛翔高校を目指して高校受験をした
このコースは少人数制になっているため先生の面倒も良いらしく、人気だ
私はそんな倍率の高い高校受験を乗り越え、見事入学することができた。
だからとっても誇らしくて、
うきうきしながらの入学式だ
--クラスをチェックして、教室に行くとまだクラスメイトはまばらだった
瑛翔高校は私の海外留学コースの他に美術コースや理系コースなど、様々な少人数コースから成り立っている。
それらコースそれぞれから3人ずつを3クラスに分けているらしい。
だから私の海外留学コースには私のほかに2人いた。
28番 荻野 星羅
29番 天川 ひかる
30番 香柳 爽
私以外は何だか名前がキラキラしてる気がする
まぁ、いっか。
人見知りで男子が苦手な私は前の席に座るはずの星羅ちゃんが来るのを楽しみにしながらスマホをいじっていた
…待っても待っても全然来ない。
あろうことか星羅ちゃんは入学式開始のための移動時間になっても現れなかった。
その代わりに、
がらがらがら〜
ゆっくりと、元気無く後ろから2番目、通路側の席に座っていた私はの後ろのドアが開いて誰かが入ってきた
星羅ちゃん!!!
と思った私は、気にしていなかったようにゆっくりと振り返った
そこに星羅ちゃん、がいるはずも無く…
いたのは男の子
なぁんだ、星羅ちゃんじゃないんかい…
残念に思ってくるっとまた元の位置に戻る。
後ろで椅子を引く音がしたから、多分あの男の子は海外留学コースの香柳くんだろう
改めて辺りを見回すけど、私の周り、星羅ちゃん以外みんな男の子
…最悪だ
ほかの女の子たちはきゃあきゃあやってるっていうのに…
でも人見知りだから怖くてその中に入っていけない…
あーあ
担任「入学式、体育館に移動ー!」
ため息をつくと担任の先生の挨拶も簡単に、入学式のために体育館に移動になった
まだ星羅ちゃんがいない…
グジグジしながら体育館に着き、緊張しながら入場、席に着くと入学式がすぐに始まった
校長「本日は爽やかな天気でありますね。清々しく新入生を迎えることができ嬉しく思い間近」
うんうん、確かに風もちょうど良くて太陽も出てていい天気…
ずるずるずこっ
うわ…
ずるずるずる
…最悪
花粉症の馬鹿野郎!!
マスクの中で私は鼻水と戦っていた
隣に聞かれる、最悪だ…
しかも隣にいるのさっきの香柳くんだ…
あーーーーー
チラッと横目で隣を見ると香柳くんが下を向いているのが見えた。
…ん?
寝てる
あ〜よかった
ぱちっ
香柳くんの目が開いた
あら、寝てなかったのね
もういいや気にしない
ずるずるずー
ずるっ
…
入学式が無事終わると私の隣に女の子が座った。
あれ、この席は星羅ちゃん…?
ひかる「星羅ちゃん?」
すると驚きながら星羅ちゃんはうなずいた
真面目そうな子だなぁ
あ、さっき代表挨拶してた子じゃん
だからいなかったのか
ひかる「海外留学コースだよね?私はひかる、同じコースなの!よろしくね〜」
星羅「あ、そうなんだ!よろしくね!」
星羅ちゃんはにこっと笑いながらそう言うと私の左隣に座っていたもう1人の海外留学コース生、香柳くんに話しかけた
星羅「海外留学コース?」
香柳「…はい、そうです」
香柳くんは驚いて顔を上げてそういった
星羅「私 荻野星羅。よろしくね!」
香柳くんはゆっくりとうなずく
ひかる「あっ、私は天川ひかる…よろしく」
香柳くんはもう一度ゆっくりとうなずく
あーだめだ、やっぱり男子に話しかけるの苦手…
明るく話そうと思うのにぶっきらぼうになっちゃう
担任「配布物配るぞー。とりあえずそこの質問に答えて書いて今提出なー」
質問質問…
ああ、これね
配られた紙にシャーペンで書き込もうとすると、左で紙の上で手の止まっている香柳くんが見えた
ペン忘れちゃったのかな?
ここは貸すべきかな…
うう、なんか緊張する
言わない方が安全だけど…
言った方がいい気がする
ひかる「ペン…忘れたの?」
すると香柳くんは顔を上げて、驚いた顔で私の差し出したペンを申し訳なさそうに受け取った
香柳「ありがとうございます」
その言い方がすごい丁寧で、今まで乱暴で嫌な態度しかとらない男子しか周りにいなかった私はこんな男子もいるんだぁ、と感動したし、
前髪で隠れそうな目がこっちを向いた時は
どきっとした
ひかる「…うん」
隣がすごい気になるけど、気にしない気にしない
思えば
その瞬間、そう、きっと
私は彼のことを好きになっていた
