* * *
「ただいまー」
「お邪魔してまーす」
家に帰り、玄関のドアを開けると
ペットボトル片手にリビングから顔を出したヒロ。
「ヒロ。
あ、私の緑茶勝手に飲まないでよ」
「いいだろ。減るもんじゃあるまいし」
「いや減ってるよ」
いつも、帰りの早い方が相手の家にお邪魔するのがお決まり。
ヒロが私の家にいるということは、ヒロの学校の方が早く終わったということ。
私とヒロは高校が違うから、放課後はこうして毎日会っている。
「祐香(ひろか)、菓子ある?」
「なにもないよ」
「じゃあ漫画でも読むか。
先に部屋行ってる」
「んー」
これが普通。
恋人でも、もとは幼なじみだし、
平気で部屋とか入るし、
やることなんて雑誌読んでお茶飲んでお菓子食べて…みたいなことだけ。
それが心地いいんだろう。ヒロは。
だからこの関係のままでいい。
恋人なんてものはただの肩書き。中身はただの幼なじみなのだ。



