出征する日は晴天だった。
それだけで気分がよかった。
大きな声で母の次子にお礼を言い妹達に笑顔を見せ集まってくれた近所の人達に丁寧に頭を下げ、そして海人は振り向きもせずに歩き出した。
後ろで妹達が泣いているのが分かったけれど前に進むしかなかった。
しばらく歩いていくと次子の声が聞こえたような気がした。
海人は振り返り道の向こうに目をやるとそこに母が見えた。
ずっと僕を追いかけてきたのだろうか?
遠くに見える母は肩を震わせ泣いているようだ。
「お母さん、僕は必ず生きて帰ってきます」
言ってはならない言葉を海人は何度も心の中でつぶやいた。



