あの夏に僕がここへ来た理由




「うふふ、お兄ちゃんはね、小さい時は大人になったらひまと結婚するって言ってたんだよ。
今は分かんないけど、でも、まだそう思ってるような気がする。

ひまちゃんだって海人さんと結婚するわけじゃないんだから、もしかしたら海人さんは私と結婚しちゃうかもしれないし・・・ね」


ひまわりは冷静を装いながらも、かなり動揺していた。


さくらは何を言ってるの?


張りつめたひまわりの様々な決意がしぼんでいくのが分かる。
そして、ひまわりは無意識に下をうつむいていた。


「ひまわりさん、ここへ来て」


海人はひまわりを庭へと連れ出した。

二人で庭へ降りると、海人は綺麗になった花壇の中を見せてくれた。
前に二人で買ったひまわりの苗が、添え木に縛られて空へ向かって伸びている。


「僕は誰とも結婚しない。

でも、もし自分が結婚することを許されるのなら、その時は迷わずにひまわりさんと結婚する」


海人はひまわりの耳元で、やるせない笑みを浮かべながらそうささやいた。